保護犬・殺処分問題・不適正飼育・遺伝病の蔓延問題。
犬たちが蒙り続けるあらかたの厳しい現実は、実は人々の善意が支えてしまっています。
どこか遠くに住む見知らぬ悪徳業者や無責任飼い主の断片情報から犯人像を想像しすぎて、
本当は見なければいけない、すぐ目の前にあるものを、見逃してしまうこともあります。
そういう流れで既存のルールからのブリーダーの良し悪しの見極め方を書いてみます。
狂犬病予防法
犬の所有者の義務である生涯一度の畜犬登録と年に一度の予防接種は、
「滅多に逮捕されない」的な身勝手で愚かしい考えで法を破る業者が多数蔓延っているので、
繁殖〜販売の責任者に必ず確認すべき重要事項で、その責任者は繁殖販売を兼ねる業者、
それぞれ別人、仲介業者も加わる、など幾通りかのパターンがあります。
しっかりしたショップだから大丈夫とか以前も買って問題がない、などと省略せずに、
犬を買うたびに都度確かめるのが正解でしょう。
ブリーダーから犬を直に買う人は犬舎見学の際に法対象全頭分の鑑札と注射済票を見せてもらい、
ヒトへの狂犬病感染を防止するために、犬への接種が所有者の義務である狂犬病予防ワクチンで、
その犬が副反応を起こす可能性をさげるために、食物や皮膚炎その他アレルギーの発症が無く、
受けた全ての予防接種で副反応による事故が出ていない血統の子犬を買えるなら安心ですね。
繁殖相談の場でもよく見かける「血統を遡って調べる」とはこういうことを指します。
副反応の症状が同じでも原因が複数だったりするので絶対的な保障でないのは当然ですが、
ただ、その配慮がなされた繁殖で生まれた子犬とそうでない子犬の両方がいることと、
欲しいときにほとんど待たずに買える子犬はすべて後者という点に、少し目を向けてください。
狂犬病予防法は人間を保護するための決まりなので、特に人間に被害がない期間の今、
動きが鈍い古臭い法律だとする浅慮なネット情報があふれていますが、
だからと言ってコンプライアンス違反に問われなくても充分非常識な話です。
ペットショップやその他の仲介業者を通すにしても直販と同じことができます。
動物取扱業はそのための規制ですので遠慮なく動物取扱責任者に質問して、
守るべきルールが当たり前に守られているかの確認をし、言質を取られるとよろしいかと。
個体のアナフィラキシーのように他にも様々な要因に影響される生き物の身体とは違って、
ある時点で順法なのか違法なのかという点は白黒ハッキリさせられますよね。
化製場法
前回の動愛法改正時に盛り込まれてからようやく認知度があがってきました。
飼育でも展示でも犬の数が多いと排泄物や抜け毛など衛生的な面が只事じゃなくなってくるので、
人のいる地域で目安として10頭以上の犬を置くには許可がいります。
けっこう古くからある決まりで、ワタクシが気付いた時には今と同じ感じでした。
直接見学の場合は犬舎が化製場法の対象なのかと、そうなら許可証の確認をしましょう。
ペットショップやその他仲介を経由する場合は狂犬病法とこれも同じく、
ショップなり仲介サイトなりの登録を受けている責任者に、
コンプライアンスへの対応が適正な生産業者との取引であるのかを堂々と尋ねましょう。
適正な相手から仕入れなきゃダメですよっとせっかく法整備されたので、
買い手側もきちんとすべき所はきちんとしましょう。
ペットショップ自体も化製場法の対象で、すでに許可証を持っていることがありますが、
それと生産場が許可を受けているかどうかは無論別なことです。ご注意を。
動物愛護法
終生飼養と繁殖制限は、その犬の所有者の職業や業種によって左右されることはありませんので、
子犬を生産して売るのが商売の業者といえど、繁殖引退相当の高齢犬だろうが、
1頭の犬を一生涯適切に飼育する義務があります。ふつうの飼い主と変わりなく。
前回の法改正で若干エキセントリックな見解が含まれてしまいまして、
要約すると業者が飼えないなら捨てるのはダメだから仲良しの愛護団体に頼めば?
という実にアホなことになってしまっています。まあそれはそうと。
繁殖制限についても要約すると、子犬がどんどん売り物になればいいけど、
売れ残りがたくさん出るようなら一旦休みなよ?くらいのアホさです。
そういう背景が犬の引き取り屋や保護犬ビジネスを発生させています。
8週齢規制のような注目度の高い話題の影に隠れていますが(嫌味です)、
これ↓の方がよくぞ改正してくれた・・!っと思いました。
『動物関係法令違反時の扱いに関し、化製場法、狂犬病予防法、種の保存法等
違反が、第一種動物取扱業に係る登録拒否及び登録取消事由に追加された』
立法と調査 2012.11 No.334(参議院事務局企画調整室編集・発行)(pdf)
なぜかと申しますと公益通報者保護法において通報の対象となる法律
(国民の生命、身体、財産等の保護にかかわる法律)に、
化製場等に関する法律と狂犬病予防法の両方が含まれているからです。
公益通報者保護法に関しては消費者庁でご確認ください。
http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/whisleblower_protection_system/overview/
通報の成果がどれくらい影響しているかはもちろん外野には不明ですが、
業の登録取り消しまで行ったケース自体は数えるくらいしかなかったと思いました。
(延べ数にしたら国内のシリアスブリーダーの総数より少ないよw)
中環審動物愛護部会の添付資料で見た気がするけどメモッてないしめんどくsゲフン
探したらまとめを公開してくれてるサイトがありました!
一部、だと思うけど(思いたいけど)
PEACEさん『<資料>第一種動物取扱業の業務停止・登録取消処分事例』
http://animals-peace.net/animal_law/case.html
ちなみにワタクシはもっと規制の強化を!とはあまり思っていません。
うまく言えない気しかしないけど・・
どんなに悪質な業者でも現役の登録拒否や登録取消や業務停止命令などは、
今のぬるいくらいの規制でちょうどいいのかもしれません。
人を裁いたり罰したり強い力を動物愛護法に望みすぎると愛誤まっしぐらかと。
そう考えているので先日の記事でご紹介した東京ゼロキャンペーンのような、
ネームバリューのある芸能人の人たちは派手な規制強化の運動を新規で宣伝するより、
地味だけどすでにそこにあって使いこなせば価値があるものを見てくれるといいのに。
だって、その「この案の方がイイからこっちを設立しよう!」運動より、
狂犬病予防法を業者に徹底させられりゃ4分の3は一掃できちゃいますっと思いますが、
あー。止めておきます(笑
この記事は、次の犬もペットショップで子犬を買えばいいというご主人に、
今の日本のその常識はあまりよいものではないから保護犬を迎えたい奥様から、
ちょっとご相談を受けたお話が元になりました。
日曜日の朝、お父さんが軽く目を通す短い読み物、を目指しはしましたがさて。
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