2008年04月04日

GTGセミナーで思ったこと

先日3月29日、オーストラリアの遺伝子検査機関GTG社主催のセミナーが開催されました。
約2時間半の講義で教えていただけたこと・感じたことなどをご報告いたします。

まずGTG社とはこちら
「遺伝子テクノロジー株式会社 (GTG) は、オーストラリアで最大のDNA検査の研究所で、
人間、動物、植物など広範囲におけるDNA分析サービスを提供しています。」

だそうで犯罪科学調査のためのDNA検査もおこなうDNA分野では信頼のおける会社の模様。

DNA検査の利点
遺伝子レベルでのアイデンティティ
血統の正確性
確実な親子鑑定
 (※ワタクシのメモはここまでなのでお友達のメモも拝借↓)
・健康を配慮した交配犬の選択ができる
・健康な繁殖によって、安心して犬を迎えることができる(買い手がね)
・遺伝病を減らす管理と犬の健康の発展に役立つ
・雑種の先祖の犬種を調べることができる

人間は犬の繁殖をする際に、
作り出す子犬たちにひとつでも多くの幸福を約束してあげる義務があります。
考えてみればそりゃそうですよね。
どの犬とどの犬で子づくりをするのかの決定権は犬には無いんですもん。
GTG社ではPRA(進行性網膜委縮症)という病気の遺伝子検査にも力を入れています。
この病気はさらに細かいタイプがありますが多くは常染色体劣性遺伝(ARと略します)で
両親から1つずつPRAの遺伝子をもらってしまった犬の半分は2歳くらいで失明してしまいます。
残りの半分は1歳台から12歳までの間に発症してしまうそうです。

本来犬の繁殖をするのなら、遺伝する病気は血統から消去しなくてはならないんです。
DNA検査ができたのはつい最近のことですが、何百年も前から純血種がいる以上は、
世界中で守られてきた最低限の当たり前のルールです。
科学的な裏付けがなかった時代はどうしていたかと言うと、
ピカピカの健康体で人懐こく犬種によって必要とされる様々な能力の高い犬以外
は親にしなかったことと、弱い子を多く産んだ犬はそれ以上産ませなかったことと
同胎に異常が多く出たらその個体が一見正常でも親にしなかったこと。など。
犬種の改良とはこういうことをやってきたわけです。

セミナーでは、オーストラリアでは当たり前ですがこうした考えが当たり前で、
犬のブリーダーたちが科学的な実証を欲したから
GTG社で犬の遺伝子検査を扱うようになったのだとお聞きしました。
日本との雲泥の差にあらためてショックを受けたところです。
(だって日本は苦しむ犬と出会ってしまった飼い主たちが声をあげはじめてるんだもの)

ちょっと大事なこと
目が見えなくなること=不幸 とは思わないでください。ワタクシも言ってません。
「五体不満足」の著者・乙武さんも仰っておられましたが、障がいは不幸ではなく不便です。
愛犬家の皆さんは飼い犬をいろんな面で家族同然に慈しまれておいででしょうが
ヒトが同様の遺伝病で盲目となった場合と、
飼い主が選んだ相手により遺伝病で盲目と決定づけられる犬とでは大きく違います。


つまり、
その病気が重いほど発症させる組み合わせを子犬に渡さないように配慮する
それが繁殖、ブリードですよってことです。
ここ間違う場合が多いんですが、遺伝病の遺伝子があることが悪いのではありません。
病気の遺伝子は誰にでもあるんです。
だって、誰でもがいくつかは持ってるんです。
犬でもヒトでも。
だからヒトは近親の結婚が法律で禁止されてるんです。
だから犬は極近親繁殖が許可制(JKC)になってるんです。
だから群れで暮らすオオカミは最上位のペアしか繁殖しないんです。
だからキタキツネに子別れの儀式があるんです。
だから成長したオスの子ゾウは群れから旅立つんです。

要は動物が子孫を作る時には、より違うタイプの遺伝子を相手に選ぶのが自然の摂理だ
ということです。
DNAの存在などまったく知らされていない時代から、なんとなくヒトも気づいていましたし
多分これからもそういったものを理解することはなさそうなヒト以外の動物も
血を離すことは基本的にしっかりと遺伝子に刻み込まれているんです。

それは全部病気を避けるためだけではありません。たとえば簡単に言うと・・
暑い所に住む動物は暑さに強い遺伝子を優性で代々受け継ぎます。
が、暑さに弱い遺伝子も劣性で伝えているケースがあります。
通常であれば劣性同士が重なると暑さに負けて滅びてしまいます。
いつか住む環境が大きく変化してしまった場合・・に出番があるかもしれません。
暑さに弱いとは寒さに強いことなので。
遺伝子には無駄があるようで、実は役立たずなものはないかもしれないんです。

で、純血種の繁殖の場合は健康だけを求めて血を離すわけにもいきません。
先人により確立された犬種をその形で守り後世に継ぐのが繁殖者の役割なので。
立ち耳のビーグルや体重50キロのビーグルが1頭くらいいたら面白いかもしれませんが
垂れ耳でコンパクトで元気一杯で尻尾がピーンと立っているからビーグルはビーグルなんですもん。
形質や気質を保持(あるいは向上)して、尚且つ健全で愛される犬を生み出すのがブリーダーです。
さらに増やすからには増えすぎて殺されている(せめて)同犬種にも
本来なら救いの手を延べる姿こそが望まれるものなのに、
あろうことか「生まない犬」の継続飼育さえ放棄するだなんて。里親さん募集とか言って。
そうしたことを考えたら、「きちんとしたブリーダー」って周りに何人いるでしょう?

ところでひとくちに動物っと言っておりますが、
実は動物を人間から見た時に大きく分けると2種類になります。
野生動物と家畜です。
愛玩動物である犬は間違いなく家畜です。
家畜をなんだか1段階下のような言葉に感じられるかたが多いのはわかっていますが、
野生動物をベースに人間が作り出し、人間の手で改良・繁栄させられ、
自然な状態--野生--に返すことはできない動物であり、
生かすも殺すも人間次第の動物として、犬は家畜であるときちんと認識すべきです。
ワタクシたちは犬も含めた家畜の人生のすべての責任を負う立場の人間です。

すでに大長編のところ申し訳ありませんがあと一言だけ。
今回のセミナーでは世界的な常識としてのブリードを前提にした講義でしたので
オーストラリア人講師の説明を素直に通訳したのでしたら
おそらく何人かのかたには「それは理想を言いすぎ」・・なんてとられたと思われます。
ですが東京でのセミナーにはスーパー通訳レディーが急遽登場し、
講師の説明は○○ですが現在の日本では○○と○○の注意もいります・・
て感じでもって、ものすごい働きをしてくださいました。
その通訳者さんのおかげでつくづく、日本はバカみたいな乱繁殖天国だと感じましたし
日本のブリーダーは根本的に何かを置き忘れていることに気が付いてほしいと願ってしまいました。


☆セミナーに出席されたかたが書かれたブログを拾ってみました☆

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posted by あきこ at 12:24 | Comment(8) | TrackBack(0) | 遺伝性疾患を知ろう | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
読みながら、確かシマフクロウも、巣立つ時に離れた森を選ぶんだよなぁ…と思い出しました。
でも、今は森が減少してるので、知らないうちに同じ森の中に兄弟とか親子とかがいる…とかって話。
これは、自然破壊だのなんだのって問題なんですが。
でも、こういう話を聞いた時、多くの人は、それは問題である、と感じるんですよね。
血が濃くなることについて、問題があると、感じるんです。
でも、ブリーダーと名のつく人たちは、その意識が低いのか、どっか飛んでいるのか、あまり問題視していないように感じています。
もちろん、それによる利点があることは承知していますが。

ところで、おなじみのヤフーの掲示板にリンクを貼ってもよろしーでしょーか?
このことを書きたくても、自分で書くにはやっぱりいろいろ足りなくて、躊躇してたんです…
Posted by さくらぼうず at 2008年04月04日 18:36
●さくらぼうずさん●
本当は名指ししたい繁殖者が大勢います。
「犬は祖父と孫の交配が許されている」とか「純血種だからそれが普通」とかの
バカみたいな増殖者どもであふれていますんで。
意味も知らんで何をほざいてるんだか。まったく。

あらごめんなさい。何だかずいぶんぼやいちゃってるわ。
えっと、リンクはどうぞお気軽に。ご紹介いただけるなんて光栄でございますわ。
Posted by あきこ at 2008年04月04日 22:45
 あっち読んでこっち読んで、どっちに何書いたらいいかと悩んでしまったよ。
あきこさん、パワー全開ですね(笑)
 先日、ひとつ記事を書いたんです。
いっぱい書いて8割がた削って。^^;
キャリア公開を妨げないこと、
それから父犬の名前の公表に絞ったのですが、
どちらも「差別」という感覚がつきまといました。
書いてる私も 自分自身で差別を作り出してるんですね。
どこかで引け目を感じてるんです。
きっと嫌がられるだろうな って思います。
 せっかく検査をしても、それを公表する場がなければ
遺伝性疾患のキャリアは表には出てこないんですね。
数的に多くの繁殖をしているブリーダーが動かないのなら
飼い主さんがもっとフラットに公表できるような環境が育つといいのですが
私も含めて、日本人・日本社会はまだまだ幼い。。。と思うと 力が抜けていきます〜(-_-;) 
Posted by グレ母 at 2008年04月05日 08:32
●グレ母さん●
あちこちで(同じ趣旨なのにもかかわらず)声を大にして調子よく書き続けるのは、
今回の1泊2日の旅がかなり充実していた証拠ですね、きっと♪

えっと・・見る人によってはすごい誤解を生みそうなので本文には書きませんでしたが、
実際このセミナーで「新しく知った種類の情報」はひとつもありませんでした。
オーストラリアで例えばボーダーコリーのCEAのGTG社が持つデータでは
クリアは66%、キャリアーが33%、アフェクテッド2%。
日本のボーダーがGTGに依頼した分では
クリアが63%、キャリアーが35%、アフェクテッドが2%。そういう細かい数字くらいです。

つまり何を言いたいのかと言うと獣医師でもなく専門の研究者でもなく、
さらにブリーダーでもない一般の飼い主である私が、
おもに日本語の本(しかもほとんど図書館の)を読んだりネットで得た情報により考えたり知ったりしたこと・・
繁殖の分野においてはそれ以上の素晴らしい方法や見解はやっぱり無かったんです。
私は英語も読めないし大学などで専門的な教育を受けたわけでもない、普通のヒトです。
特殊な能力が無くても、誰でも公平に充分に情報を集められるのですから
幼いのは日本人の繁殖者だけなのかもしれません。
Posted by あきこ at 2008年04月05日 12:05
あぁ時差のあるコメント入れちゃいましたね( ̄▽ ̄;)
我が家の非力なポメを野に放したら瞬く間に狩られてしまうでしょうね〜。間違いなく家畜です。
リンクさせていただきますね。
Posted by いちごまま at 2008年04月05日 23:09
●いちごままさん●
うちのポメたちはトンビが空を飛んでいると警戒態勢に入ります。
さらわれた経験なんかないのに、面白いもんです。
Posted by あきこ at 2008年04月07日 22:29
始めまして。こんにちは。
いちごちゃんの所から来ました。

我が家のミニチュア・プードルはPRAの疑いのある子です。
現在2歳、まだまだ目はしっかりと見えていますが、うっすらと白内障の症状が出ています。
最初は、若くて元気な犬が失明と考えただけでも涙が出てしょうがなかったのですが、今はなったらなった時!と割り切り楽しく生活をしています。

ミニチュア・プードルはトイに比べると全然マイナーな犬種になるのでしょうが、やはりポロポロと遺伝的な病気はあるものです。だから、過去に流行になった犬種、現在、流行になっている犬種、これから流行になる犬種はどれだけ無理のあるお産をしているのかと気になってしかたがありません。大体・・・生き物に流行があるのも可笑しな事ですよね。
繁殖も・・・もう少し、法律で厳しく規制してくれれば不幸な動物さんも減るのになー。。。と考えてしまう事が多いです。
Posted by とらじまま at 2008年04月10日 12:38
●とらじままさん●
はじめまして、ようこそ&コメントありがとうです♪

とらじくんをお迎えした頃まで遡って拝見させていただきました。
で、おせっかいですが気がついたことをほんのちょっぴり・・。
シリアスブリーダーってブリーダーたち自身も実はよくわかっていないようです。

*ブリード犬種は1など少数
*両親はもちろん親戚犬を知れる
*生体通販、幼齢販売ナシ
*ドッグショーに参加

(一部、勝手に引用しています)これらは「ブリーダー」であるなら最低線です。
犬舎が綺麗とか見学できるかというのももちろん当たり前ですが、
これらのことは「きちんとしたブリーディングをしているかどうか」の目安にもならないんです。

シリアスブリーダーとは、まず自分がその胎で得たい犬の作出が目的で
間違っても胎全部を「売る」ことは考えられません。なので出産は普通2〜3年に一度など。
目的はブリーディングストックを得ることですから先祖は10代以上前の犬を普通に知っていますし
どの犬がどんな健康状態で何歳で死亡したのかの情報も持っています。

そんな「ブリーダーさん」なんて、国内では見たことがない人がたくさんいらっしゃると思います。
私も全犬種を対象にしてもほんの数人しか存じあげていないです。
日本が特殊すぎるだけであることは残念ながら間違いはないみたいですが・・。

そういったことの法規制は少なくともこの先数十年は望めそうにもないですが
遺伝病の愛犬の飼い主さんたちが改めて考え直すことにより、
不便な思いをする犬たちがほんの少しずつでも減っていってくれたらいいなと夢見ています。
Posted by あきこ at 2008年04月12日 18:39
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